[10]2(1) 個人のプライバシーに属する事実をみだりに公表されない利益は,法的保護の対象となる。
本件逮捕の事実も,第1審原告のプライバシーに属する事実であって,みだりに公表されないという法的
保護を検討すべきである。
[11] 第1審被告は,インターネット上のウェブサイトであるツイッターを管理運営し,一般のユーザー
からの短文の投稿記事を受け付け,この短文の投稿記事を広く一般のユーザーに閲覧させるサービスを
提供している。全世界におけるツイッターへの月間アクセス数は約39億回(平成29年6月当時)であって
,全世界で6番目にアクセス数が多いウェブサイトである。一般の私人のほか,米国の現職大統領をはじ
めとして,各界の著名人,官公庁,民間企業も,ツイッターを利用して情報発信を行い,これを受信す
る者も非常に多数にのぼる(以上につき,当裁判所に顕著な事実,甲67,96,102,乙19,28~30,32)
。ツイッターには検索機能が付加されており,利用者が検索ワードを入力すると,投稿記事中からこれ
に対応するものが検索結果として表示される。この検索機能は,公衆がツイッター上の膨大な量の投稿
記事の中から必要なものを入手することを支援し,ひいては投稿者による投稿行為の情報発信力も高め
るものである。そうすると,ツイッターは,その検索機能と併せて,現代社会においてインターネット
上の情報流通の基盤として大きな役割を果たしているということができる。ツイッターに投稿された記
事の削除を命じることは,ツイッター上の記事の投稿及び閲覧並びに付属の検索機能を通じて果たされ
ている,インターネット上の情報流通の基盤としての役割に対する制約になる。
[12] そうすると,プライバシーに属する事実を含む投稿記事を,ツイッター上に表示し,一般の閲覧
に供する行為が違法か否かは,当該事実の性質及び内容,当該事実が伝達される範囲とその者が被る具
体的被害の程度,その者の社会的地位や影響力,当該投稿記事の目的や意義,当該投稿記事が掲載され
た時の社会的状況とその後の変化,当該投稿記事において当該事実を記載する必要性など,当該事実を
公表されない法的利益と各投稿記事を一般の閲覧に供し続ける理由に関する諸事情を比較衡量して判断
すべきものである。そして,第1審被告に対して,ツイッター上の投稿記事の削除を求めることができる
のは,比較衡量の結果,当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合に限られると
解するのが相当である。
[13](2) 本件逮捕の事実を公表されない法的利益と各投稿記事の公表が続けられる理由に関する諸事情
を比較衡量する。
[14]ア 本件逮捕(平成24年4月16日)に係る被疑事実は,本件逮捕の前日に,女性の裸をのぞき見る目
的で旅館の女湯脱衣場に侵入したというものである。建造物侵入罪の法定刑は3年以下の懲役又は10万円
以下の罰金というものであり,決して軽微な犯罪ではない。また,本件逮捕は,各種報道機関からイン
ターネット上で実名報道されており,社会的に相応に高い関心を集めた事件であった。本件逮捕の被疑
事実を罪となるべき事実とし,第1審原告を罰金10万円に処する裁判が平成24年5月に確定し,同月30日
に罰金が納付されており,被疑事実が存在したことが裁判により有権的に確定されている(なお,この
裁判があったことは,報道その他により広く一般に知られる情報とはなっていない。)。本件各投稿記
事は,第1審原告が社会的に非難されるべき行為をした事実を摘示するものとして,公共の利害に関する
事実に係り,公益を図る目的にあたるものに出たといえる。(原判決別紙投稿記事目録1の記事に「ある
意味、勇者w…まあ、春ですし…」という記載があることも,当該記載の内容や当該投稿記事全体に占
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